秋田県・仙北市を思い切り楽しむ



3月は色々とあちこち移動してます。
先日の石川から東京の後は、東京から秋田。東北新幹線「はやぶさ」「こまち」連結分離トラブルで行けないかも……と心配したけれども、無事到着できました。
怪我の功名か、盛岡での秋田新幹線は珍しい在来線ホームからの乗り換えで、みんな写真を撮っていたので私もパシャリ。
久しぶりの仙北市。まだまだ冬の景色に驚きつつも、東北らしさに感動しています。
おすすめしていただいた場所や食は制覇しないと気がすまないので、初日は昼食を2回も食べてしまいました(太るかな)。
一食目は田沢湖駅近くの「桃屋」で”ほろ酔い豚のかばやき丼”。お肉が柔らかいだけでなく甘みがある上にタレも美味しくてあっという間に完食です。
二食目は乳頭温泉に行く途中の「ジンギスカン食堂」。雪道を恐る恐る進んでいき現れた建物のガラス戸を開くとモクモクとした空気と一緒に若者の「マジでうまい!」の声が聞こえてきました。ますます期待が高まり、焼けたお肉をタレにつけて食べたら本当に美味しい〜!「タレがすっごい美味しいから」と言われて来た甲斐がありました。(お肉も柔らかくて美味しいです)ごちそうさまでした。

そしてやって来ました、田沢湖スキー場!
朝から快晴の無風で暑いくらい。リフトを乗り継いでてっぺんから見下ろす田沢湖には周囲の山々が映り込み、幻想的で本当に綺麗でした。
”湖にダイブするような感じ”だと地元の方々に聞いていましたが、その通り。どのコースを滑っても最高の景色を楽しめるように設計されていて、お昼を食べる時間が勿体なく感じられるほどです。(でもしっかり横手焼きそばを食べました)
午前はスキー学校に入り、二時間のレッスンを受けました。これまで自己流で滑ってきたので、改めて先生の話を聞いて、そういうことか!と気づきがたくさん。
ターンのときに体の軸をずらしながら、谷側の板のうえに全体重を乗せて滑ってまた同じようにターン・・・だったと思います。 出来るか、出来ないかはさておいて……。気分だけはオリンピック選手並みにうまくなった気がします(笑)ちなみに、レッスンを受けた田沢湖スキー学校には、全国的にもレベルの高い先生たちが揃っているそうです。
スキー場では、台湾からの人たちに出会いました。仙北市地域おこし協力隊だった鐘 偉倫さん(ショウ・Williamさん)は、仙北市にきてスキーとスノーボードに魅せられて、なんとポスターのモデルにもなるくらいの腕前になり、今回も台湾人のスノーボードのプライベートコーチをしていました。私もいつか教えてもらいたい!
田沢湖スキー場は、2015年からモーグルのワールドカップ開催地となり、モーグルの聖地とも呼ばれています。ピョンピョンと軽やかに滑っていくまだ小学校低学年くらいの子供たちが大勢いて羨ましい。さらにちょうど東日本医科学生総合体育大会(東医体)が開催されていて、母校昭和大学のスキー部はかなり強いと聞いてなんだか嬉しくなりました。
初の田沢湖スキー場ですっかりファンとなり、リフト運行時間のギリギリまで満喫して帰りました。
今度はパウダースノーの時期に来たいな。
私が「仙北市台湾親善大使」を務める秋田・仙北市では、素晴らしい歴史と文化について、楽みながら学ぶ、そんな経験もできると知って早速行ってきました。
東北有数の観光地である仙北市。風光明媚な田沢湖のほか、中心都市の角館は重要伝統的建造物群保存地区として知られ、しっとりした雰囲気のある武家屋敷と商家の建物をたっぷり見て回ることができます。
今回は、商家のなかでも特に歴史のある「安藤醸造」を訪れました。安藤醸造は170年以上もの歴史を持つ味噌と醤油の醸造元。なんと「発酵講座」というものがあるのです。しかも講師は6代目当主の安藤社長自らが務めていただくという贅沢な学びの場です。
「発酵とはなんでしょう?」
発酵食品が身近にあるからか、色白で紳士的な安藤社長が、優しい表情で私たちに質問を投げかけました。
なんとなく体にいいもの。そんなイメージしか発酵について考えていませんでしたが、安藤さんによれば、正解は、微生物のはたらきによって食物が変化し、人間にとって有益なものができること。
その代表として、味噌や醤油、納豆、チーズだけでなく、さらにはカカオ豆を発酵させて作る”チョコレート”も発酵食だというので、目からウロコが落ちまくる、そんな時間でした。
代々この地で醸造業を営んできた一族の安藤社長は、発酵食文化だけでなく、角館の歴史も絡めながら話をしてくださり、勉強になりました。麹を使った卵焼きや豆腐の試食の他、麹を使って実際に野菜の漬物を作る実習もできるので、見て聞いて作ってと、充実した体験でした。
煉瓦造りの座敷蔵や文庫蔵は東北地方で最古のものであり、仙北市指定有形文化財にも登録されている立派な蔵。お雛様の時期のため、座敷蔵には明治の火事を生き延びた古い雛人形や珍しい角館押絵が飾られていてとても華やかでした。
安藤社長は、受け継がれてきた大切な食文化を広めようと、店内に英語や中国語の表記をするだけでなく、発酵の手順を記したパンフレットなども多言語対応になっていて、外国人にもわかりやすい環境でした。
ちなみに「こうじ」はベジタリアンやビーガンの人が安心して使える調味料として、世界的に注目されているそうです。 店内では色々と試食でき、甘口で香り豊かな「しろだし」と「ぬれおかき」がおいしくてお土産にしちゃいました。

角館では、ほかに江戸時代から伝わる白岩焼の伝統を受け継ぐ唯一の窯元「和兵衛窯」を訪ねました。
白岩焼は海鼠釉(なまこゆう)の青と赤茶の土色とのコントラストが美しい陶器。白岩焼窯元の末裔である渡邊すなおさんと旦那様の敏明さん、そして娘さんの渡邊葵さんが守り続ける白岩焼。ギャラリー「白渓荘」で迎えてくださったのは渡邉葵さん。突然の訪問にも優しく応対してくださり、色々と解説してくださいました。
どれもすてきな作品ばかりで、しばらく見入っていましたが、気に入ったマグカップやおちょこを選び、ピアスも購入。ピアスは渡邉葵さんの作品で、青と金の小ぶりなもので、どんな場面にも似合いそうでつけるのが楽しみです。
角館を歩いて発見したのが「新潮社記念文学館」です。
新潮社は『私の台南』など3冊、拙著を出しており、大変お世話になっています。存じ上げなかったのですが、新潮社の創設者・佐藤義亮さんが仙北市出身とのことで、文学館が建てられたそうです。 新潮社のあゆみから近代文学の歴史を興味深く見させてもらいました。
そこでは、同じく仙北市出身で直木賞作家の西木正明さんの特別展もありました。2023年に亡くなられた西木さんですが、家族から寄贈されたびっしりと付箋の貼られた資料や取材ノートなどが展示されていて、綿密な取材に基づく小説作りの一端を垣間見ることができ、同じ作家として大変刺激を受けました。
私は記憶に頼って文献の調査まで行き届かないことが多いので、執筆に対する西木さんの真摯な姿勢を学びたいと思います。
私の父の一族も炭鉱と深い関わりを持ってきたので、西木さんの直木賞受賞作品でもあり、長崎の軍艦島と呼ばれる端島炭鉱を舞台とした『凍れる瞳』と『端島の女』を読んでみようと思います。
角館を歩いていると、台湾ややってきたと思われる観光客の方々に出会いました。秋田県にはタイガーエアーが就航していて、インバウンドのうちの約4割が台湾旅行客だと聞いて納得です。
東京では、中国や香港の方々となかなか一般の日本人も見分けがつかないですが、地方にくると、台湾観光客の圧倒的な存在感をひしひしと感じますね。
台湾の人たちは本当に日本の隅々まで遊びに出かけてくれます。桜の名所でもあるため、来月の桜のシーズンにはさらに多くの人で賑わうことでしょう。
季節を変えて私もまた訪れたいです。



仙北市滞在で宿泊したのはかの有名な秘湯「乳頭温泉」。
乳頭温泉といえば、日本全国の温泉地”いつか行きたい””必ず行きたい”のトップ3に必ず入る大人気の温泉です。
田沢湖駅から車を走らせることおよそ30分。山を超え、雪道を慎重にドライブしながら辿り着きました。
「鶴の湯温泉」「乳頭温泉郷」「黒湯温泉」「妙乃湯」「大釜お温泉」「蟹場温泉」「孫六温泉」の7つの湯があり、それぞれ独自の源泉があり、泉質も乳白色の硫黄泉から透明の単純泉などバラエティに富んでいます。また、”湯めぐり帖”があり、これを持って湯巡り号バスに乗って、或いはゆっくりと散策しながら温泉巡りをする人が多いようです。
温泉大好きな私にとって、長年憧れてきた温泉で、今回滞在できることになり、否応なく気分も上がります。
今回宿泊したのは「休暇村 乳頭温泉郷」。ここは他の宿に比べて部屋数が多く、リニューアルされた建物で快適に過ごせます。到着後、早速お風呂に入ったのですが、内湯は2種類で、やや高温で乳白色の単純硫黄泉とぬるめで黄金色のナトリウム炭酸水素塩泉があって、ふたつの湯船を行ったりきたりしちゃいました。
露天風呂は乳白色の単純硫黄泉。ブナの樹にチラチラと雪が舞い落ちる景色を眺めていると、台湾の高雄からやってきたという旅行客と一緒になりました。
「仲間の間で乳頭温泉が人気なの」
頭にタオルを乗せる彼女とあれこれと温泉話に花を咲かせつつ、半身浴を織り交ぜて1時間近くも入っちゃいました!極楽です。
乳頭温泉の各宿は個別の夕食がほとんどのようですが、乳頭温泉郷は朝夕ともにビュッフェスタイルで提供しています。
イメージ的に料理もお決まりのパターンになりがちなビュッフェですが、ここはちょっと違います。地元の新鮮な食材を使った料理をたくさん用意してくれています。
例えば、たっぷりのセリが入った秋田名物のほうとう鍋や、地元の人たちが大好きな山の芋鍋。秋田のお米を食べて育った”秋田錦牛”の柔らかくてほっぺが落ちるほど美味しい!秋田名物のじゅんさいや山菜「サク」の含め煮、「ひろっこ(アサツキの若芽)」、比内地鶏の卵かけご飯など、東京ではあまりみかけない食材に思わず食欲が刺激され、何回お替わりしたかわかりません(笑)。
毎年、温泉宿を変えながら一軒ずつ回りたい乳頭温泉。次回はどこにしようか……考えるだけでワクワクしてきます。
今回の仙北市の旅、よく食べてよくお風呂に入ってよく遊んだとっても楽しい旅でした。いよいよ春の到来です。サイクリングにも最適な季節になるので、次はどこにいこうかな〜。

