一青妙 HITOTO TAE

Essay | 散文・部落格

2025.12.09

自転車で“三宅島緑化プロジェクト”

自転車・ロードバイク 日本

12月5日〜7日「自転車で“三宅島緑化プロジェクト”」生まれて初めて三宅島を訪れました。
島の振興にサイクルツーリズムを役立てられないかというプロジェクトのため、現地視察に呼んでいただいたのです。

夜の10時過ぎ、東京の竹芝桟橋から東海汽船の橘丸に自転車を積み込んで、南に向かって約6時間揺られた先に現れたのが三宅島。東京から約180km離れた場所に位置しているというのに、”東京都三宅村”であり、車は品川ナンバーだから少し不思議な感じです。
島は、2000年の噴火で全島避難を余儀なくされるほど大きな被害を受けるだけでなく、火山ガスの影響で緑の約6割が失われたため、自然や緑の回復を促す緑化プロジェクトが進められています。
今回の視察は、サイクリングに緑化プロジェクトを組み合わせたもので、旧知の茨城県国際交流協会の根本博文理事長にお誘いいただきました。2泊3日の行程に、合計10名で三宅島を自転車でぐるっと一周しながら、植樹やビーチクリーンを行います。集まった仲間は、長年、三宅島のレンタサイクルの整備に携わる茨城県笠間市の「セーフティーショップおおしま」の大嶋繁利オーナーが中心となり、サイクルショップのサイクリストたちとロードレーサーの“鈴なり妖怪”こと木下友梨菜さんと、かなり本格的なサイクリストばかり。
泊まったのは、今年5月に開業したばかりのCSリゾート。島内の宿泊施設は共同トイレや大浴場タイプの民宿が多いなか、バス、トイレ付きの個室ばかりのCSリゾートは若い旅行者に人気だそうです。

早朝に到着したのでひと休みして、美味しい朝食をお腹いっぱい食べたあとに早速サイクリングスタート!標高775mの雄山を中心に、一周約35kmの都道212号線である三宅島一周道路が敷設されていますが……宿の前から早速坂道が現れ、その後も登り下りが繰り返され、まるでジェットコースターのよう。
決して大きな島ではないけれども、平坦な道がほとんどないぐらい起伏が激しいため、なかなか走りごたえがあります。

宿から反時計回りに約10km進んだ錆ケ浜海水浴場でビーチクリーン作業をしました。年々、海洋ゴミ問題が深刻になっているとニュースなどで見聞きするものの、実は海が苦手なため、海水浴場とは縁遠く、初めてビーチクリーンを体験します。サイクルシューズから運動靴に履き替え、軍手をつけ、ひとり一枚ゴミ袋を持って海岸を歩けば、発泡スチロールにペットボトル、ゴム、ビニール袋などが岩の間にゴミとなって残っていました。短時間でしたが、みんなで集めたゴミは結構な量となり、普段ポイポイと捨てているものたちがぷらぷらと海を漂い、分解されずに環境問題になることを実感させられます。ゴミはあるものの、錆ケ浜のゴミに異臭を放つものはなく、全国の清潔な海水浴場リストの上位に三宅島がランクインしていることに納得です。

昼食後、植林地整備活動として植樹をするために、七島展望台を目指します。距離にして約5kmと短いものの、平均勾配9%以上で、壁のような区間もあるものすごいヒルクライムですが、私は観光協会の電動アシストレンタサイクルを使って、楽々と登ることができました。
この時期にしては風も弱く、晴天に恵まれたため御蔵島から八丈島、八丈小島などを見ることができ、最高のヒルクライムとなり、みんな大興奮。

ビーチクリーンに続いて、植樹も初体験です。鎌や鍬を持っていざ入山。十人で50本の苗木を植えました。周囲には、数年前に植樹された苗木がわたしくらいの背丈まで伸びていて、今日の苗木も、5年後、10年後にスクスクと育っていることを想像すると、なんだか嬉しくなります。

今回の企画を立ち上げたのは、三宅島観光協会の谷井重夫事務局長です。
谷井さんの声がけで、、三宅島の緑化とビーチクリーン活動を通しての関係人口の創出と、サイクルツーリズムによる地域活性を考えており、夕食後に様々な意見交換を行いました。
約10年前に三宅島に移住してきた谷井さんの三宅島愛は半端なく、さまざまな角度から、三宅島の魅力を語ってくださいました。
なかでも印象に残ったのが——三宅島は“地球むきだしの島”。

三宅島は約20年周期で噴火を繰り返す火山体であり、海底爆発で噴出したスコリア(火山噴出物の一種で、塊状で多孔質な岩石)をザクザクと踏み歩きながら見た新鼻新山の雄大さに息を呑みました。ちなみに、国産の自動車メーカーのCMやGLAYのHOWEVERのPVはこの新鼻新山をバックに撮影されていて、宇宙のようにミステリアスな世界観が映し出されています。

翌日は、三宅島の自然ガイド・菊池ひとみさんが島の歴史や植生などを解説してくださり、火山泥流に埋もれた椎取神社の鳥居や1940年の噴火でできたひょうたん山など、噴火の度に変化してきた景色を見てまわりました。

伊豆七島のなかでは、大島や新島、式根島には観光客が多いけれども、三宅島は釣りで訪れる人がほとんどだそうです。確かに、三宅島にはコンビニがありません。おしゃれなカフェや行列のできるスイーツ、美味しい海鮮を食べさせる居酒屋なども見かけることができませんでした。そのあたりも改善点かもしれません。私が指摘することはすでに島の皆さんもご存知だと思います。環境的にも地理的にも難しい点も多いでしょう。それでも、信号が3つしかない一周道路は整備されていて、交通量も少なく、サイクリストにとってとても走りやすい環境でした。運が良ければ、野鳥を見たり、イルカと泳いだり、ダイナミックなクジラの遊泳などを見ることもできるそうです。
噴火スコリアの上をグラベルで駆け抜けられたら楽しいだろうな……などなど、噴火からの復興のあり方の模索が続いています。

帰りの船から見えた満月とレインボーブリッジの綺麗なこと……。
幻想的な夜空を見上げながら思いついたのが、台湾の人たちに三宅島を紹介するとしたら——「最遙遠的東京(もっとも遥か遠くにある東京)」というキャッチフレーズです。
素朴さを売りに、短くても走りごたえのあるサイクリングと島の歴史や文化に触れながら、植樹やビーチクリーン活動に参加するような、新しい観光の形の選択肢のひとつになり得ると感じた3日間でした。

三宅島のみなさま、いろいろとお世話になり、ありがとうございました。また再会の日を楽しみにしています!

*後日談*三宅島に関連した映画『ロック~わんこの島~』を見ました。2000年の三宅島の噴火を題材としたもので、今回見た火山泥流に埋もれた鳥居や白い枯れ木がそのまま映っていて、胸が詰まりました。<噴火のような、俺ら人間にはどうしようもできない自然との戦いに直面したとき、俺らが持たなければならない武器はひとつは”落ち込まないこと”>主人公のセリフは、大切な心構えだと感じました。

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